こんにちは。
大阪府茨木市のアルバトロス行政書士事務所です。
建設業許可を取得した後も、事業者は様々な義務を履行し続ける必要があります。
これらの義務は、建設業法の遵守はもちろんのこと、事業の健全な運営と信頼性の維持に不可欠です。
ここでは、建設業許可取得後の主な義務について、分かりやすく解説します。
最後までお付き合いください。
Table of Contents
Toggle1. 変更届の提出義務
建設業許可を取得した後、許可申請時の内容に変更があった場合は、速やかに変更届を提出する義務があります。
これは、行政が常に事業者の最新情報を把握し、適切な指導・監督を行うために不可欠です。
変更内容によって提出期限が異なりますので注意が必要です。
1.1. 変更届が必要な主な事項
商号または名称、氏名、営業所の名称、所在地:商号変更や本店移転など、会社の基本情報に変更があった場合。 資本金額:増資や減資など、資本金額に変更があった場合。 役員または政令で定める使用人(支配人、支店長等)の変更:役員の就任・退任、支店長等の変更があった場合。 経営業務の管理責任者の変更:経営業務の管理責任者が交代した場合。 専任技術者の変更:専任技術者が交代した場合。 国家資格等(監理技術者)の追加・削除:新たに資格を取得した者や、資格を喪失した者が出た場合。 定款の変更:事業目的の追加など、定款の内容に変更があった場合。 主要株主の変更:主要な株主に変動があった場合(法人のみ)。 財務諸表(貸借対照表、損益計算書など):毎事業年度終了後、決算変更届として提出が必要です。
1.2. 変更届の提出期限
変更内容によって提出期限は異なりますが、
原則として変更日から2週間以内に提出が義務付けられているものが多くあります。
特に、役員や経営業務の管理責任者、専任技術者の変更など、許可要件に関わる重要な変更は迅速な対応が求められます。
決算変更届は、毎事業年度終了後4ヶ月以内に提出が必要です。
2. 決算変更届(事業年度終了報告書)の提出義務
建設業許可業者は、毎事業年度終了後、必ず「決算変更届(事業年度終了報告書)」を提出する義務があります。
これは、会社の経営状況や工事実績などを行政に報告するもので、建設業許可の維持に不可欠な書類です。
2.1. 決算変更届の主な内容
・工事経歴書:その事業年度に完成した工事の実績を全て記載します。工事名、発注者名、請負代金、工期などを詳細に記載する必要があります。 ・財務諸表:貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など、会社の財政状態や経営成績を示す書類を添付します。 ・事業報告書:会社の事業の概況などを記載します。株式会社のみ必要です。 ・その他の書類:営業所の写真、主要株主名簿など、許可行政庁によって求められる書類は異なります。
2.2. 提出期限
毎事業年度終了後4ヶ月以内に提出が義務付けられています。
この期限を過ぎると、行政指導の対象となる可能性がありますので、計画的な準備が必要です。
3. 経営業務の管理責任者・専任技術者の常勤義務
建設業許可の要件の一つである
「経営業務の管理責任者」と「営業所技術者(旧専任技術者)」は許可取得後も引き続き、その営業所に常勤している必要があります。
・経営業務の管理責任者:建設業の経営に関する豊富な経験を有する者であり、会社の意思決定を担う重要な役割を果たすため、常に会社にいることが求められます。
・営業所技術者(旧専任技術者):請負契約の適正な締結や履行を確保するため、専門的な知識・経験を有する者であり、その営業所で専ら業務に従事している必要があります。
これらの者が退任したり、常勤性を満たさなくなった場合は、許可要件を欠くことになります。
速やかに交代要員を確保し、変更届を提出する必要があります。
4. 適切な帳簿の作成・保存義務
建設業法では、
建設工事に関する帳簿(施工体系図、施工体制台帳、工事台帳、下請負人への支払い状況等)を作成し、
一定期間保存することが義務付けられています。
これらの帳簿は、工事の適正な実施状況や下請負人への支払い状況などを確認するために重要です。
4.1. 主な帳簿
・建設工事台帳:各工事の概要、請負代金、工期、下請負人に関する情報などを記載します。 ・施工体系図:特定建設業者が下請契約を締結した場合に作成・掲示するもので、工事に関わる全ての業者の役割分担を示します。 ・施工体制台帳:特定建設業者が作成するもので、下請負人の名称、許可番号、主任技術者等の情報を記載します。 ・賃金台帳:労働基準法に基づき、従業員の賃金支払い状況を記録します。
4.2. 保存期間
原則として、帳簿の閉鎖後または工事完成後5年間の保存が義務付けられています(例外あり)。
5. 建設工事の適正な施工義務
建設業許可業者は、建設業法をはじめとする関連法令を遵守し、安全かつ適正に建設工事を施工する義務があります。
適切な契約の締結:書面による契約締結、不当な低価格での請負の禁止など。
安全管理の徹底:労働安全衛生法に基づき、作業員の安全確保、危険防止措置の徹底。
品質管理の徹底:設計図書通りに工事を施工し、品質を確保。
適正な下請契約:下請負人への適正な支払い、一括下請負の禁止など。
建設リサイクル法の遵守:建設廃棄物の適正な分別・リサイクル。
これらの義務を怠ると、行政指導、業務停止命令、最悪の場合、許可の取り消しとなる可能性があります。
6. 一括下請負(丸投げ)の禁止
建設業法では、発注者から直接請け負った建設工事の全てを、
他の建設業者に一括して請け負わせる「一括下請負(丸投げ)」を原則として禁止しています。
これは、工事の品質確保や下請業者の保護を目的としています。
7. 監督処分の遵守義務
万が一、建設業法違反などにより行政から監督処分(指示処分、業務停止処分、許可の取り消しなど)を受けた場合は、その処分内容を誠実に遵守する義務があります。
監督処分に違反すると、さらに重い処分を受ける可能性があります。
8. 建設業法改正への対応
建設業法は、社会情勢の変化に合わせて度々改正されます。
許可業者は、常に最新の建設業法や関連法令の情報を把握し、それに合わせて事業運営を行う義務があります。
情報収集を怠ると、知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまう可能性があります。
9. 許可の更新申請義務
建設業許可には、一般建設業許可・特定建設業許可ともに5年間の有効期間があります。
有効期間が満了する前に、許可を継続したい場合は、更新申請を行う必要があります。
更新申請を怠ると、許可が失効してしまい、建設業を営むことができなくなります。
更に許可を取り直す場合、新規申請の基準になります。
間違いなく手間も費用も余計にかかることになるでしょう。
9.1. 更新申請の時期
有効期間満了日の3ヶ月前までに申請を行うのが一般的です。
申請手続きには時間がかかるため、余裕をもって準備を進める必要があります。
9.2. 更新申請の際の確認事項
更新申請時には(都道府県によって異なりますが)、
経営業務の管理責任者や専任技術者の常勤性などの許可要件を満たしているかどうかが改めて審査されます。
日頃からこれらの要件を維持するよう努めることが重要です。
まとめ
建設業許可を取得することは、信頼性の高い事業者としての証ですが、その裏には多くの義務が伴います。
これらの義務を理解し、適切に履行することで、事業の健全な発展と、社会からの信頼を維持することができます。
変更届の提出、決算変更届の提出、経営業務の管理責任者・専任技術者の常勤維持、適切な帳簿の作成・保存、建設工事の適正な施工、一括下請負の禁止、監督処分の遵守、継続的な経営状況の改善努力、建設業法改正への対応、そして許可の更新申請。
これら一つ一つの義務を真摯に果たしていくことが、許可業者として長く事業を継続していく上で不可欠です。
不明な点があれば、行政書士などの専門家や、各都道府県の建設業許可担当部署に相談することをお勧めします。
日頃からの情報収集と法令遵守の意識が、安定した事業運営に繋がります。
皆様の事業の発展を心から願います。
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