【行政書士が解説】なぜ建設業許可は必要なのか?知っておくべき重要性と取得のメリット

こんにちは。
大阪府茨木市のアルバトロス行政書士事務所です。
建設業に携わる皆様、あるいはこれから参入を検討されている皆様。
建設業を営む上で、「建設業許可」という言葉を耳にしないことはないでしょう。
しかし、「なぜ建設業許可が必要なのか?」「取得しないとどうなるのか?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
建設業許可がなぜ必要なのか、その重要性と取得のメリット、
そして許可なく事業を行うことのリスクについて、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。
最後までお付き合いください。
大阪府の建設業許可手引きはこちら
はじめに:建設業許可とは何か?
まず、建設業許可とは、建設工事を請け負うために必要な、国土交通大臣または都道府県知事から与えられる許可のことです。
一定規模以上の工事を請け負う場合、この許可なくして事業を営むことはできません。
では、なぜこのような許可制度が設けられているのでしょうか。
それは、建設工事が国民の生活や安全に直結する非常に重要なものであるからです。
手抜き工事や粗悪な工事は、人命に関わる事故や建物の倒壊など、甚大な被害を引き起こす可能性があります。
そこで、適格な業者のみが建設工事を請け負えるよう、許可制度によって一定のルールを設けているのです。
1.建設業許可が「法律で義務付けられている」から
建設業許可が必要な最も直接的な理由は、建設業法という法律で取得が義務付けられているからです。
建設業法第3条には、
「建設業を営もうとする者は、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならない」と明確に規定されています。
ただし、例外として「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は許可不要とされています。
「軽微な建設工事」とは?
・建築一式工事の場合:請負代金の額が1,500万円未満の工事、または延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事 ・建築一式工事以外の場合:請負代金の額が500万円未満の工事
この「軽微な建設工事」の範囲を超える工事を請け負う場合、いかなる場合であっても建設業許可が必須となります。
個人事業主であっても、法人であっても関係ありません。
許可なく事業を営むことのリスク
もし許可なく上記規模の工事を請け負った場合、建設業法違反となり、以下の厳しい罰則が科せられます。
・3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法第47条) ・さらには、その後の建設業許可の取得が困難になる、公共工事への入札が制限されるなど、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
法律遵守は事業を継続する上で最も基本的なルールです。
事業の健全な発展のためにも、適切な時期に許可を取得することが不可欠です。
2.「信用力・信頼性」が格段に向上するから
建設業許可を取得していることは、事業者にとって大きなステータスであり、社会的な信用力や信頼性の向上に直結します。
許可を取得するためには、
経営業務の管理責任者としての経験、営業所技術者の配置、財産的要件のクリアなど、様々な厳しい要件を満たす必要があります。
これらの要件をクリアしているということは、
その事業者が「適切な経営体制を整え、技術力も備えている健全な事業者である」
という公的なお墨付きを得ていることに他なりません。
具体的に信用力向上に繋がる場面
・元請けからの信頼獲得: 大手ゼネコンや中堅建設会社が下請け業者を選定する際、最も重視する要素の一つが建設業許可の有無です。許可を持つ業者であれば、安心して仕事を任せられるという信頼感に繋がります。 ・公共工事への入札参加: 国や地方公共団体が発注する公共工事は、ほとんどの場合、建設業許可を持つ業者でなければ入札に参加できません。公共工事は安定した受注が見込めるため、事業拡大には不可欠です。 ・顧客からの安心感: 一般の個人顧客が自宅のリフォームや新築を依頼する際、許可業者であれば「しっかりした会社だ」という安心感を抱きます。悪質な業者によるトラブルが報じられる中で、許可業者は選ばれる理由の一つとなります。
許可を取得することで、これまで取引できなかった大口の案件や、安定的な受注に繋がる新たなビジネスチャンスが大きく広がります。
3.「営業範囲」が拡大し、事業成長の機会が広がるから
建設業許可を取得することで、請け負うことができる工事の規模や種類が格段に拡大します。
前述の通り、「軽微な建設工事」しか請け負えない無許可業者とは異なり、
許可業者であれば億単位の大型工事や、より専門性の高い工事も受注できるようになります。
営業範囲拡大の具体例
・大規模工事への参入: マンション建設、商業施設、道路工事など、請負金額が数千万円から数億円に上る大規模工事は、許可がなければ受注できません。これらの大型案件は、企業の売上や利益を大きく押し上げる重要な柱となります。 ・特定専門工事への参入: 例えば、土木一式工事、建築一式工事だけでなく、電気工事、管工事、舗装工事、内装仕上工事など、29種類の専門工事に対応できるようになります。これにより、自社の強みを活かしたニッチな分野での受注も可能となり、事業の多角化を進めることができます。 ・元請けとしての事業展開: 許可を持つことで、自らが元請けとなって工事を受注し、他の下請け業者に仕事を依頼するという事業形態も可能になります。これにより、より大きな利益を得られるだけでなく、工事全体の管理・品質向上にも貢献できます。
営業範囲の拡大は、企業の持続的な成長を実現するために不可欠です。
許可取得は、まさに事業の次なるステージへ進むためのパスポートと言えるでしょう。
4.「コンプライアンス遵守」の証となり、社会的責任を果たすから
現代社会において、企業のコンプライアンス(法令遵守)は非常に重視されています。
建設業許可を取得していることは、その企業が法令を遵守し、社会的責任を果たしていることの明確な証となります。
建設業許可の取得・維持には、単に書類を提出するだけでなく、
適切な技術者の配置、適切な会計処理、適切な雇用管理など、事業活動全般にわたる法令遵守が求められます。
コンプライアンス遵守の重要性
・企業イメージの向上: 法令を遵守する企業は、社会からの評価が高まります。これは、採用活動における人材確保や、地域社会との良好な関係構築にも繋がります。 ・不法行為のリスク回避: 無許可営業は、行政処分や罰則の対象となるだけでなく、事故やトラブルが発生した際に、その責任をすべて負わなければならないリスクがあります。許可業者として法令に基づいた事業運営を行うことで、このようなリスクを最小限に抑えることができます。 ・業界全体の健全化への貢献: 一社一社が法令を遵守し、適正な事業運営を行うことは、建設業界全体の健全な発展に寄与します。粗悪な工事や不正行為が横行する業界では、健全な事業者が育ちにくくなります。
建設業許可は、単なる許可証以上の意味を持ちます。
それは、企業が社会の一員として、責任ある行動を実践していることの証明なのです。
5.下請け業者保護や適切な取引慣行の確保
建設業法は、元請け・下請け間の契約関係についても細かく規定しており、
下請け業者を保護するための様々な措置が盛り込まれています。
建設業許可を持つ業者は、これらの規定を遵守する義務があります。
例えば、書面による契約の義務、不当に低い請負代金の禁止、支払期日の遵守などが挙げられます。
これは、下請け業者が安心して仕事に取り組める環境を整備し、業界全体の健全な取引慣行を確立するために非常に重要な側面です。
許可業者が適切にこれらの規定を遵守することで、
下請け業者は安心して仕事を受注でき、結果として建設工事全体の品質向上にも繋がります。
6.社会保険加入義務の徹底と健全な雇用環境の実現
近年、建設業許可の要件として、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)への加入が厳格に求められるようになりました。
これは、建設業界における社会保険未加入問題の解消を目指し、労働者の福利厚生を確保するための重要な取り組みです。
許可を取得することで、企業は社会保険への加入が義務付けられ、従業員は安定した社会保障を受けることができます。
社会保険加入のメリット
・従業員の安心感: 社会保険に加入していることは、従業員にとって安心して働ける環境の証となります。病気や怪我、老後の不安が軽減され、仕事へのモチベーション向上に繋がります。 ・優秀な人材の確保・定着: 労働人口が減少する中で、優秀な人材の確保は企業にとって喫緊の課題です。社会保険完備は、採用活動において強力なアピールポイントとなり、従業員の定着率向上にも寄与します。 ・企業の社会的評価向上: 労働者の権利を尊重し、健全な雇用環境を整備している企業は、社会からの評価が高まります。これは、企業のブランドイメージ向上にも繋がります。
建設業許可は、労働者の保護と健全な雇用環境の実現という側面からも、その重要性を増しています。
まとめ:建設業許可は「未来への投資」
これまで述べてきたように、建設業許可は単なる「お上からの許可」ではありません。
それは、事業の成長、信用力の向上、法令遵守、そして社会貢献という多岐にわたる側面において、
企業が健全に発展していくための「未来への投資」であると言えます。
「軽微な工事しかしないから大丈夫」「いつか取ればいい」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、
許可なく事業を続けていると、思わぬところで大きなリスクに直面する可能性があります。
一方、許可を取得することで、
これまで見えなかったビジネスチャンスが広がり、より安定した経営基盤を築くことができるでしょう。
建設業許可の取得は、決して簡単な道のりではありません。
しかし、そのプロセスを通じて、自社の経営体制や技術力を改めて見つめ直し、
企業としての基礎体力を強化する絶好の機会でもあります。
もし、建設業許可の取得に関して疑問や不安をお持ちでしたら、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。
皆様の事業の発展のために、最適なサポートを提供させていただきます。
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