【行政書士が解説】経営事項審査「完成工事高(X1)」を最大化する徹底対策マニュアル

経営事項審査のX1(完成工事高)対策:徹底解説
こんにちは。大阪府茨木市のアルバトロス行政書士事務所です。
1. はじめに:なぜ完成工事高が重要なのか?
建設業者にとって、公共工事の受注に欠かせないのが経営事項審査(経審)です。
この経審で最も大きなウェイトを占めるのが【完成工事高(X1)】です。
完成工事高は、企業の施工能力や実績を客観的に示す指標であり、点数アップはそのまま公共工事受注の可能性向上に直結します。
今回は【X1の点数を最大化するための戦略と具体的な対策】について解説します。
短い記事なので最後までお付き合いください。
2. X1(完成工事高)の算出方法と評価基準
2.1 算出方法
完成工事高は、直近の決算期における完成工事高の金額をそのまま用いるのではなく、過去2年または3年間の平均値で評価されます。
- 2年平均:直前2期分の完成工事高の合計額を2で割ったもの
- 3年平均:直前3期分の完成工事高の合計額を3で割ったもの
どちらか有利な方を選択できるため、直近の売上が急伸している場合は2年平均、安定的に売上を伸ばしている場合は3年平均を選択するのが一般的です。
申請時には、どの年度の平均を用いるかを選択して提出します。
ただ必ずしも数字が良いほうを選ぶのではなく、
①どのくらいの規模の工事をとりたいか
②そのためには格付けをA,B,C,Dのどれを目指すのか
③そのために経審の点数を何点にする必要があるのか
を逆算で考えるのが大切です。
経審は成績表のようなものだから点数が高い方がいいと思い込んでも不思議ではないですが。
3. 完成工事高を最大化する戦略
X1の点数を上げるには、単純に売上を伸ばすだけでなく、経審のルールを理解した上での戦略的な対応が不可欠です。
3.1 決算期の見直し
決算期は、企業の事業計画や資金繰りを考慮して設定されますが、経審対策の観点からも重要な要素です。
例えば、大型工事の完成時期を特定の決算期に集中させることで、その期の完成工事高を一時的に引き上げることが可能です。
これにより、2年平均や3年平均を算出する際に有利な状況を作り出すことができます。
3.2工事完成基準と会計処理の厳格化
経審では原則として工事完成基準が用いられますが、会計監査を厳格に行い、売上計上時期を適切に管理することで、決算期ごとの完成工事高をコントロールすることが可能です。
例えば、期末に完成間近の工事を翌期にずらすことで、翌期の完成工事高を意図的に引き上げ、経審に有利な状況を作り出すことができます。
期末未成工事を、工事完成基準により会計処理している場合、「工事進行基準」を採用することで完成工事高を増加させることができることもあります。
「工事完成基準」は、工事の施工検査の後、発注者に引き渡された時点で売上高と認識されます。
そのため決算日に引き渡されていない完成工事に関する入金額は、「未成工事受入金」として計上されます。
これに対して「工事進行基準」は、期末未成工事の進行度合いに応じて期間損益に反映させる方法です。
未完成の工事であっても工事の出来高に応じて完成工事高を計上することができます。
- 工事完成基準:工事全体が完了し、引き渡しが完了した時点で全額を売上として計上する方法。
- 工事進行基準:工事の進捗度に応じて、その都度売上を計上する方法。
4. 具体的な経費削減・利益確保策と経審への影響
完成工事高を増やすには、受注を増やすだけでなく、経費を適切に管理し、利益を確保することも重要です。
4.1 業務効率化と原価管理の徹底
業務プロセスをデジタル化し、無駄な作業を削減することで、人件費や管理費を削減できます。
また、工事ごとの原価を厳密に管理し、予算超過を防ぐことで、利益率を高めることが可能です。
4.2 専門業者との連携強化
自社で全てを請け負うのではなく、信頼できる協力会社や専門業者と連携することで、コストを抑えつつ高品質な工事を提供できます。
これにより、リピーターを増やし、継続的な売上を確保することができます。
5. 経審申請時の注意点
5.1 財務諸表の作成と会計処理
経審の申請には、税理士が作成した決算書が必要です。
完成工事高の計上時期や金額に誤りがないよう、事前に税理士と綿密に打ち合わせを行うことで提出書類の信頼性を高めることができます。
ただ「決算書と建設業法に則した財務諸表はベツモノ」なので建設業許可に詳しい行政書士に相談すると良いとおもいます。
5.2 添付書類の準備
経審申請には、工事請負契約書、請求書、領収書など、完成工事高を証明する膨大な書類が必要です。
これらの書類は、日頃から適切に整理・保管しておくことが不可欠です。
書類の不備があると、申請が遅れたり、点数が減点されるリスクがあります。
6. まとめ:継続的な改善が成功の鍵
経営事項審査のX1(完成工事高)対策は、一朝一夕でできるものではありません。
日々の営業努力はもちろんのこと、会計処理や社内体制の見直し、戦略的な事業計画の策定など、継続的な改善が不可欠です。
行政書士として、私は企業の皆さまが本業に専念できるよう、経審申請のサポートはもちろん、経営状況を分析し、最適な対策を提案します。
完成工事高を最大化し、公共工事の受注機会を広げたいとお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。共に、企業の成長を支えていきましょう。
7. 付録:よくある質問と回答
Q1. 完成工事高を証明する書類は具体的に何が必要ですか?
A1. 工事請負契約書、注文書、請求書、入金が確認できる通帳のコピー、発注者が発行する工事完了証明書(※)などが必要です。特に、契約書の内容と請求金額、入金金額が一致しているか、厳密に確認されます。 ※公共工事の場合は工事成績評定通知書などがこれに該当します。
Q2. 消費税は完成工事高に含まれますか?
A2. 消費税は含まれません。完成工事高は税抜き金額で計上する必要があります。
Q3. 元請工事と下請工事のどちらが評価されますか?
A3. 元請工事も下請工事も、どちらも平等に評価されます。経審では、元請工事と下請工事を区別することなく、完成工事高の合計額が評価の対象となります。ただし、元請工事の実績は、工事成績評定の取得を通じて、他の審査項目(技術力など)に影響を与える場合があります。
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